蔵の整理をしたら出てきた、家にずっとあった鉄扇を使えるように整えたいなど、時代物の親骨を購入されて持ち込まれる方もいます。修繕です。
春吉は修繕から始まりました。ややこしい鉄扇の修繕が最後に持ち込まれていたのは大抵うちだったと思います。相談されたあと他の店から回ってきたこともあります。
鉄扇は鍛冶屋さん、または扇子屋さんが苦労して作られた作品が多いです。 ですので、そもそもが開閉できない状態で、開閉したら壊れるものが多かったようです。
時折、その時代の器用な方が作ったんだなっと思える良いものがあります。親骨の裏、扇面紙を取ったあたりに文字が掘り込まれていまして、会ったこともない職人さんに思いを馳せたりします。
修繕ご希望の場合はお電話またはメールでご連絡下さい。
このページではそんな鉄扇修繕において、どういった点にお金がかかるのかをご説明しましょう。
1 折り・間の特殊性
間というのは折り目と折り目にはさまれた部分のことです、一間二間と数えます。
この間の形状が通常の扇子とかけ離れていたり、細すぎたり短すぎたり、その間にこの長さの骨じゃ開かないとなったりしていたりします。親骨に合わせて鍛冶屋さんが頑張ったんだろうなぁとか思います。
春吉では専用の機械でオールマイティに対応します。もちろん微調節はします。ただ、つまり扇面紙の折から特注になるためお値段がかかるわけです。
2 中骨が長い、幅広い
扇子において中骨の取り付け方は何通りかあります。扇面紙を作ってから骨を挿すもの、骨を扇面紙に貼り付けるもの、扇面紙を張り合わせるときに間に骨を組み込んでいくもの。現代の舞扇子や一般的に流通している扇子は扇面紙を先に作ってから骨を挿すタイプです。もちろん檜扇のように骨字体が扇面を兼用しているものもありますね。
一番困るのが、扇面の一番上まで骨があり、かつ幅広く、下手したら扇面紙と同じサイズの骨です。骨が先にあって扇面紙を貼り付けていくタイプです。もちろんご要望があればお引き受けはしますが、高いです。骨も特注、取り付けも特注。ここだけで10万円とか掛かるのもザラです。 なるべく現代風に変更されるようにご進言します。
また、虫が食ってしまった中骨を再生などもお高いです。
3 親骨に象嵌が入っている
鉄扇の価値の一つであり、魅力であり、人気も高い象嵌です。象嵌がついているから修繕費用が高くつくというわけではないのですが、実は春吉の鉄扇親骨はわかりにくいですが少し曲げが入っています。この曲げが開閉に重要なのです。曲げが入っていない親骨の場合、象嵌などが入っていなければ少し曲げを入れることは出来るのですが、象嵌が入っていますと親骨に加工をしにくいです。
4 要が曲がっている
よくあるのが要、芯の部分が曲がっています。どちらかというと経年劣化もあるため基本交換です。座金の部分は再利用できる場合は再利用します。無理な場合はうちで使っている菊座金をお勧めします。また、鉄扇術などの武術用に要をわざと堅くしている品もあります。その場合は最初から開閉が出来ない作りになっているかと思います。
5 握り扇から扇子にしたい
ほぼ鉄棒のもの、中骨扇面等揃っていても開閉が出来ないものを握り扇といいます。握り扇自体価値が低いもののため、修繕・再加工のほうが高くつきます。お品は手入れをして保存しておいて春吉製品の購入をお勧めしています。
6 他店で買った鉄扇を修繕したい
これに関しては要望があれば承りは出来ますが、おそらく買われた値段より修繕費用のほうが高くなります。そもそも扇面紙があってない、親骨に曲げが入ってない、要が握り扇子上等の堅さなど、全部交換になりましたら、もうそれは春吉製品ですね。